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会計・税務相談

2011年3月11日

Q.昨年度および今年度の予算案で触れられている生産性・技術革新控除(Productivity and Innovation Credit = PIC)の概要について教えてください。

生産性・技術革新控除(PIC)とは

生産性・技術革新控除(PIC)は、技術革新により生産性や付加価値を高める投資活動を奨励するために、2010年度予算案において複数の既存の優遇税制を統合して新しく導入された優遇税制です。

 

PICでは、以下の6つの事業分野における所定の投資活動にかかる支出について、400%を限度とする所得控除が認められます。

 

  1. 所定の自動化装置の取得または賃借にかかる費用
  2. 労働力開発庁(WDA)または技術教育院(ITE)認証の社内教育訓練、もしくは全ての外部の教育訓練にかかる費用
  3. 事業に使用される知的財産の取得にかかる費用
  4. 特許、商標、デザインまたは植物品種の登録にかかる費用
  5. 要件を満たす研究開発活動にかかる人件費及び消耗品費(当該研究開発が国外で行われる場合には、納税者がシンガポールで行う営業活動に関連したものであること)
  6. 新製品及び工業デザインの開発にかかる費用(当該活動が主としてシンガポールで行われること)

 

現在のところ、制度の適用は2011賦課年度から2015賦課年度の5年間とされています。所得控除は、6つの事業分野の各々につき2011賦課年度及び2012賦課年度の2年間合計で0.8百万Sドルの支出(3.2百万Sドルの所得控除)、2013賦課年度から2015賦課年度の3年間合計で1.2百万Sドルの支出(4.8百万Sドルの所得控除)を上限としています。すなわち、1事業分野につき5年間合計で最高8百万Sドルの所得控除が適用されることになります。

 

所得控除は、課税される法人税がなければ実質的な利益を得ることができません。そこで、資金繰りに窮する中小企業を支援するために、2011賦課年度から2013賦課年度の3年間について、所得控除に代わり現金の支給を選択できる制度が用意されています。現金支給を選択した場合、2011賦課年度及び2012賦課年度については、全6事業分野の合計支出のうち2年間合計でS$200,000の支出を限度とし、その30%すなわち最高S$60,000が現金で支給されます。2013賦課年度については、同様にS$100,000の支出を限度とし、その30%すなわち最高S$30,000が現金で支給されます。

 

現金支給の適用を受けるには、以下の要件を満たさなければなりません。

 

  • PICが適用される基準年度に適用対象となる支出が発生していること
  • シンガポールにおいて営業していること
  • 3名以上のシンガポール国民または永住権者の従業員(個人事業主、パートナー、株主兼取締役を除く)を雇用していること

 

課税所得から控除しきれない欠損金については、株主変動要件および事業継続要件を満たすことを前提に繰り越して将来の課税所得と相殺する、または欠損金繰り戻し制度を利用して直前の賦課年度の課税所得と相殺する、あるいはグループ控除制度を利用して他の関連会社の課税所得と相殺することができます。

 

なお、自動化装置及び知的財産の取得に関しては最低限の保有期間が定められており、この要件が満たされない場合には、課税額について遡及修正されることになります。

 

  • 自動化装置の取得 購入から処分まで最低1年以上保有すること
  • 知的財産の登録 登記から処分まで最低1年以上保有すること
  • 知的財産の取得 取得から処分まで最低5年以上保有すること

取材協力=斯波澄子(Tricor Singapore Pte. Ltd.

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.184(2011年03月11日発行)」に掲載されたものです。

本記事は一般的情報の提供のみを目的として作成されており、個別ケースについて、正式な会計士の助言なく、本情報のみに依存された場合は責任を負いかねます。

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