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会計・税務相談

2009年5月4日

Q.シンガポールへの事業進出を検討しています。事業の形態として現地法人と支店があると聞きましたが、どのような違いがありますか。簡単に教えてください。

シンガポールでの事業形態・現地法人と支店の違いについて

シンガポールで事業を行う場合、

 

  1. 現地法人
  2. 支店
  3. 有限責任パートナーシップ(LLP)
  4. パートナーシップ
  5. 個人事業

 

の5つの形態がありますが、日系企業がシンガポールに進出する形態としては、現地法人または支店が最も一般的です。現地法人と支店の主な違いには、以下のようなものがあります。

 

 現地法人 支店
設立および登記
親会社と同一の会社名を使用して登記する必要はない。
シンガポール会社法に準拠した定款を作成し、登記する。
本社と同一の会社名を使用して登記しなければならない。
本社の設立証明書、定款、取締役を登記する。
登記料
私会社および株式資本を有する公開会社の場合にはS$300。
株式資本を有しない公開会社の場合にはS$600。
本社が株式資本を有する会社の場合にはS$300。
本社が株式資本を有しない会社の場合にはS$1,200。
責任者
会社の経営は、取締役がその責任を負う。
取締役1名以上(うち最低1名はシンガポール居住者)を選任しなければならない。
支店の経営は、代理人がその責任を負う。
代理人2名以上(シンガポール居住者)を選任しなければならない。
決算および監査
決算日は親会社と同日である必要はない。
会社の決算書又は連結決算書について、シンガポール公認会計士の監査を受けなければならない。
決算日は本社と同日でなければならない。
支店の決算書について、シンガポール公認会計士の監査を受けなければならない。
年次報告書の登記
シンガポールで上場する公開会社は決算日から4ヶ月以内、それ以外の会社は決算日から6ヶ月以内に定時株主総会を開催し、株主総会日から1ヶ月以内に年次報告書および決算書を登記しなければならない。
決算書をXBRL形式に変換して登記しなければならない。
本社の定時株主総会開催日から2ヶ月以内に支店の年次報告書、支店の監査済決算書および本社の決算書を登記しなければならない。
決算書をXBRL形式に変換して登記する必要はない。
税務上の居住性
シンガポールで管理および支配が為されていると見なされる場合には、通常、居住法人として取り扱われる。
通常、本社の所在地国において管理および支配が為されていると見なされ、非居住法人として取り扱われる。
シンガポール居住者からの特定の支払いについて、源泉徴収税が適用される。
租税条約の適用
および外国税額控除
居住法人として、シンガポールと他国との租税条約の適用を受ける。
居住法人として、租税条約が締結されていない国からの特定の所得について片務的外国税額控除が適用される。
非居住法人は、シンガポールと他国との租税条約の適用を受けない。
非居住法人には、片務的外国税額控除が適用されない。
親会社又は本社から
の送金および利益の還元
親会社からの送金は、資本金又は借入金等として扱われる。
親会社への利益の還元は、配当の支払いにより行う。
本社からの送金も本社への送金も、同一会社内の資金の振替に過ぎず、自由に行うことができる。
事業の終了
解散手続きを取らなければならない。
事業終了の通知を行う。通知を行ってから12ヶ月後に登記が抹消される。

 

法人税は、現地法人、支店共に課税所得のうちの最初の1万Sドルの75%および次の29万Sドルの50%を控除後の所得について、17%(2010賦課年度より)の税率で課税されます。

 

日本の税制は全世界所得課税であるため、外国支店の税務上の損益は、本店の損益に含められ合算課税されます。現地法人の場合には、別会社であるため、タックスヘイブン税制の適用対象となる場合を除き、合算課税されることはありません。更に、今年度の税制改正により、外国子会社からの受取配当の95%相当額について益金不算入となる見込みですので、シンガポールの事業に利益が見込める場合には、現地法人を設立した方が節税につながるでしょう。

取材協力=斯波澄子(Tricor Singapore Pte. Ltd.

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.144(2009年05月04日発行)」に掲載されたものです。

本記事は一般的情報の提供のみを目的として作成されており、個別ケースについて、正式な会計士の助言なく、本情報のみに依存された場合は責任を負いかねます。

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