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会計・税務相談

2008年8月18日

Q.シンガポールの年金制度には、中央年金基金(CPF)の他に外国人も拠出できる付加退職年金(SRS)という制度があると聞きましたが、どんな制度か簡単に教えてください。

シンガポールの付加退職年金制度

SRSは、CPFに上乗せした公的年金制度として、2001年4月1日に施行されました。この制度が導入された目的は、主として二つあります。一つは、急速な少子高齢化が進む中、CPFだけでは老後の生活資金として十分でない懸念があり、国民により多くの貯蓄を奨励するためです。

 

もう一つは、CPFの対象から除外されている外国人にCPFと同様の税務上の恩典を与えることにより、より多くの有能な外国人をシンガポールに呼び込むためです。

 

SRSは付加年金制度であるため、加入はあくまでも任意とされています。又、個人のみによる拠出であり、雇用主は拠出しません。資金の運用は、民間に任されています。更に、前述のように外国人も加入できるといった点が主な特徴です。

 

口座開設

SRSへの加入は、運用者に指定されているDBS、UOB、OCBCの何れかの銀行にSRS口座を開設することから始まります。SRSの預金金利や手数料は、各銀行毎に設定されています。積立金は、預金としておいておくだけでなく、投資信託、生命保険、年金保険等の様々な金融商品に投資することが可能です。

 

拠出

SRSにはCPFと同様に年間拠出限度額が定められており、この金額を超えて拠出することはできません。これまでは前暦年に勤労所得(事業所得又は雇用所得)があることが拠出の前提とされており、シンガポール市民権者及び永住権者については前暦年の勤労所得の15%(最高S$11,475)、外国人については35%(最高S$26,775)が年間拠出限度額とされてきました。今年度の税制改正により、2008年10月1日より、前暦年における勤労所得の有無に関係なく拠出できるようになります。又、年間拠出限度額についても、シンガポール市民権者及び永住権者については一律にS$11,475、外国人についてはS$26,775とされます。 拠出金は、加入者個人が全額を負担します。加入者が被雇用者である場合に、雇用主が給与の一部を天引きして加入者のSRS口座に支払うことは可能ですが、この場合、雇用主がSRS口座に支払った金額について、税務上、加入者の雇用所得に含めて申告されなければなりません。尚、拠出金は、全額が所得控除の対象となります。

 

払い戻し

SRSの積立金は、完全な免税ではなく、積立金の払い戻し時に払戻金額の50%について課税されます。但し、これは、拠出開始時における法令上の退職年齢(現行62歳)以後に払い戻しを受けた場合で、それ以前に払い戻しを受けた場合には、払戻金額の100%について課税され、かつ早期払戻罰金として払戻金額の5%を徴収されます。又、払い戻しは、法定退職年齢以後の最初の払い戻しから10年以内に行うこととされており、払戻期間満了時にSRS口座に残高がある場合には、その50%について一括して課税されます。 尚、シンガポール市民権又は永住権を有しない外国人による払い戻しについては、拠出開始から10年が経過すれば、払戻金額の50%について課税される特例が適用されます。又、シンガポール永住権者又は外国人による払い戻しについては、源泉徴収税が適用され、払戻金額の50%又は100%について非居住者税率(現行20%)で源泉徴収されます。加入者が払い戻し時に税務上の居住者である場合には、所得申告時に税額控除を申請することになります。

 

外国人にとってSRSは、年間最高S$26,775の所得控除を得られるという点で現時点における節税効果はありますが、少なくとも10年間は資金が凍結される点や、払い戻し時に非居住者であった場合には実効税率10%で課税される点などを考慮すると、さほど魅力的な制度とは言い難い気もします。今後の税制改正において、善処が望まれるところです。

取材協力=斯波澄子(Tricor Singapore Pte. Ltd.

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.128(2008年08月18日発行)」に掲載されたものです。

本記事は一般的情報の提供のみを目的として作成されており、個別ケースについて、正式な会計士の助言なく、本情報のみに依存された場合は責任を負いかねます。

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