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会計・税務相談

2006年10月16日

Q.当社は、日系企業のシンガポール現地法人です。日本の本社が今年度より部長職以上の従業員を対象にストックオプションを付与することになり、シンガポール現地法人の駐在員の中にもその対象者がいます。ストックオプションに関してシンガポールで留意すべき点について教えてください。

ストックオプション

ストックオプションの付与については、会計上、税務上のそれぞれにおいて留意すべき点があります。

 

会計上の留意点

シンガポールの会計基準である財務報告基準(FRS)102号は、従業員による人的役務の供与等、会社に提供された品物やサービスの対価としてストックオプションその他の株式による支払いが為される場合、提供された品物やサービスの価値を時価で算定し、認識しなければならないと定めています。ご質問の事例のように、本社が自社株式のストックオプションを従業員に付与する場合であっても、当該駐在員がシンガポール子会社に供与する人格役務に対してオプションが付与されるのであれば、シンガポール子会社は、当該人的役務の対価であるストックオプションの価値を算定し、人件費として計上しなければなりません。この取引の相手勘定は、資本の部の積立金に計上されます。

 

FRS102号は、新しく採用された会計基準であり、シンガポール証券取引所に上場する会社は2005年1月1日以後に開始の事業年度より、その他の会社は2006年1月1日以後に開始の事業年度より適用が開始され、遡及適用されます。

 

税務上の留意点

シンガポールの税法では、駐在員がシンガポールで就労中に付与されたストックオプションは、シンガポールにおける人的役務の供与に対する報酬の一部であり、シンガポールで課税対象となる雇用所得であると見なされます。但し、ストックオプションの付与による所得金額は、オプションを行使した時の株式の時価とオプションの行使価額との差額によって計算されますので、オプションを行使するまでは課税されず、オプションを行使した暦年の課税所得に含めて申告することになります。

 

シンガポール国籍又は永住権を有しない駐在員がシンガポールで就労中に付与されたストックオプションを行使する前に日本に帰任することになった場合には、帰任時の個人所得税の精算において、帰任日1ヶ月前の株式の時価とオプションの行使価額との差額をストックオプションによる所得金額と見なして、課税申告しなければなりません。帰任後にオプションを行使した時の株式の時価がシンガポールでの税務申告に用いられた時価よりも低く、実際に得た行使益よりも高い金額についてシンガポールで課税されてしまった場合、帰任日の翌年から6年以内であれば税務署に賦課決定のやり直し及び申請することができます。

取材協力=Price Waterhouse Coopers

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.084(2006年10月16日発行)」に掲載されたものです。

本記事は一般的情報の提供のみを目的として作成されており、個別ケースについて、正式な会計士の助言なく、本情報のみに依存された場合は責任を負いかねます。

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