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会計・税務相談

2015年11月16日

Q.投資持株会社について簡単に教えてください。

投資持株会社(Investment Holding Company)について

A.投資持株会社とは、投資の目的で株式や不動産といった資産を取得し長期的に保有することを主たる事業目的として設立された会社を指します。

 

例えば、同じように株式を保有する会社であっても、その売買により利益を得ることを目的として取引を行う会社は投資持株会社とは言えず、一般の事業会社として捉えられることになります。また、単に株式を保有するだけでなく、営業支援等のサービスも併せて提供する会社の場合は、投資持株会社と言うよりもサービス会社であると言えるでしょう。

 

一般に、投資持株会社には、保有する資産から得る利子、配当、賃貸所得といった受動所得しかありません。これらの所得は、投資所得として一般の事業から得る事業所得とは区別されるため、投資持株会社の税務上の取り扱いは、一般の事業会社とは若干異なります。

 

まず、シンガポールの税法では、課税所得は、原則として所得の源泉別に益金から損金を控除した金額を合計して計算すると定められています。従って、投資持株会社の場合には、収入別にそれぞれ対応する費用を控除した金額を合計して課税所得を計算します。ここで、ある投資について赤字が生じていても、それを他の所得と相殺することはできません。他の所得との相殺が認められているのは事業所得に生じた欠損金に限られており、投資持株会社が投資から得る所得は事業所得とは見なされないからです。同様に、繰り越しによる将来の課税所得との相殺も事業所得の欠損金にのみ認められており、投資所得に生じた欠損金は繰り越すことはできません。また、固定資産に関する税務上の減価償却であるキャピタルアローワンス(Capital Allowances)も、事業所得を得るために取得した資産に限られており、投資持株会社が取得した固定資産には適用されません。ただし、新規に取得したものでなく、一旦取得した固定資産の取替えに生じた費用については、損金となります。

 

次に、投資持株会社の場合、損金となる費用には、①直接経費、②法定経費、③間接経費の3つの種類があります。①の直接経費は、文字通りその所得を得るのに直接関連して発生した費用を指します。例えば、株式を取得するための資金として調達した借入金の支払利息や、不動産の管理費、不動産税といった費用がそれにあたります。②の法定経費は、会社が法令を遵守するために最低限必要な業務に発生する費用で、法人秘書業務料、記帳代行料、監査料、税務申告料等がそれにあたります。③の間接経費は、会社の維持運営に発生する一般管理費で、従業員給与、事務所賃借料、光熱費等がそれにあたります。①の直接経費は、それぞれの対応する益金から控除されます。ただし、収入を得る以前に発生した費用については、控除することはできません。②の法定経費と③の間接経費は、対応する益金を特定できませんので、各益金の金額に応じて按分した上で控除します。その際、②の法定経費は全額を控除できますが、③の間接経費については、控除できる金額は全ての投資所得の総額(非課税や免税となる所得も含む)の5%が限度とされています。

 

投資持株会社に適用される法人税率は、一般の事業会社と同じ17%で、課税所得の最初の30万Sドルに対する部分的免税も同じように適用されます。また、シンガポールの税法では、所得は原則として暦年を基準として課税することと定められていますが、投資持株会社の所得は、事業会社の所得と同様に会計年度を基準として申告することが認められています。

取材協力=斯波澄子(Tricor Singapore Pte. Ltd.

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.292(2015年11月16日発行)」に掲載されたものです。

本記事は一般的情報の提供のみを目的として作成されており、個別ケースについて、正式な会計士の助言なく、本情報のみに依存された場合は責任を負いかねます。

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