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ビジネス4賢者が送る、成功への道しるべ

2015年10月5日

感性トレンド編〈第7回〉 変わり続ける時代の中で、どう行動するのか?

「かつて人気だったデザインやブランドが売れなくなってしまうのはなぜか?どうしたら人気が戻ってくるのか?そもそも人気って?」
腕時計のデザインをしていた21年間、ずっと頭を悩ませていたこの疑問。56年周期の感性トレンドの事例を探すうちに、その回答を得ることができました。しかし、人の感性が変わってまた元に戻る周期は、思ったよりも長いですね。売り上げが落ちたら、すぐにでも取り戻したいもの。それなのに56年もかかるとは……。研究を始めた当初、私が担当していたファッションブランドの腕時計には、その周期が長すぎて活かせないと思いました。この56年の周期は個人、個人の感性の差もあって、2、3年は前後するものなのですが、だいたい56年の周期で、それが40年になるとか、30年になる、というように急には短くなるものではなさそうだということも見えてきました。

では、短期間に感性トレンドを活用するにはどうすればよいのでしょうか。
来季の計画など、未来のことについてこれからの7年を先読みして反映させるのに感性トレンドは使えます。人の感性がどんな嗜好性になっているのかを知ることで、計画の検証や修正時の指標の1つとして活用できます。
また、現在や過去のことにも活用できるでしょう。例えば流行遅れになってしまったものを、感性傾向そのままのデザインや方法で売り続ければ売り上げは下がる一方です。下がったところで放っておけば、また56年の周期で人気は戻ってきます。ですから、単純なものに好感度大の時期の物、複雑なものに好感度大の時期の物と、その移行時の物というように、14年ごとの気分の変化に合わせて複数自社ブランドをつくり、メインブランドを順番に入れ替える計画ができます。
1つのブランドだけに絞る場合、人の感性は変化してしまうので、長期間売れ続けるためにはその商品も変化をさせ続ける必要があります。モノやサービスなどの変化のさせ方は、これまでの本欄でも何度か書いたとおり「これからは単純な方向へ」、でしたね。

さて、人はどうでしょうか。シンプルなものや無地が好きなタイプと、複雑なものや色とりどりの柄が好きなタイプ、大きく2つに分けてみましょう。あなたはどちらのタイプですか?時代とともにあなたの感性も変わりますが、以前にもご紹介したシャネルは、複雑な時代になっても複雑なものが好きになりませんでした。シンプルで合理的な時代に彼女の感性があっていたので活躍し、複雑な時代に変わると流行遅れになり活動も中止。そしてまたシンプルな時代に入れば活動再開です。
時代に合わせて変化していく人は長い期間人生の山谷が少なく、一方で変化できない人は自分に合う時代で大ヒットして、合わない時代はどん底に落ちる。この感性トレンド上に人をのせてみると、良い時と悪い時が誰にでもあって、割に平等なんだなと思うようになりました。
自分に合わない時代が到来したら、その時代に合った人のサポートに回って世に貢献する。そんな時期の生き方の提案も感性トレンドから見えてきます。

最後になりましたが、皆様のさらなるご発展をお祈り申し上げます!
長らくお読みいただいて、ありがとうございました!

手塚 祐基(てづか ゆき)

tedzuka株式会社感性リサーチ研究員、倉敷芸術科学大学芸術学部非常勤講師
21年間の腕時計デザイナーを経て、2006年より感性研究を開始。現在、ネーミングコンサルティングや企業向け講演活動を行う。筑波大学、工学院大学、東京大学大学院情報学環などのゲスト講師も務める。共著『人は語感でいい・悪いを決める』KAWADE夢文庫

ウェブサイト:ameblo.jp/tetsuka-kansei/

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.289(2015年10月05日発行)」に掲載されたものです。

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