シンガポールのビジネス情報サイト AsiaXビジネスTOP第1話:日本への所得税の納税 - 不動産収益の落とし穴

意外に知らない?日本の法律

2014年1月20日

第1話:日本への所得税の納税 - 不動産収益の落とし穴

多くの日本人の方々が世界中で活躍されるようになった昨今、その急激な国際化に、法律の改正が追いついていないことを実感します。特に税の分野では、国境をまたぐことによって、数千億円の売上げがあっても法人税をほぼゼロに「節税」する手法が編み出されている一方で、同じく国境をまたぐことによって、逆に2つの国から二重に多額の課税を強いられる事例も後を絶ちません。国際化と税の問題は、現在、その矛盾が大きく露呈されています。

 

無論、国も必死です。このような状態を決して放置しているわけではなく、世界で生きる日本人の皆様は、国境を越える納税の問題を避けて通ることができません。例えば、日本に住所を有さないで海外に居住し、海外に生活の本拠を置いている方々は、おそらく日本の所得税法上、「非居住者」にあたるでしょう。しかしながら、非居住者であっても、一定の日本国内から生じた所得(国内源泉所得)に対しては、日本に所得税を納税する必要があります。

 

その代表的な課税事例が、日本の不動産から収益を得ている場合です。「日本でマンションを購入するや否や海外赴任の辞令が出た」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。そのマンションを賃貸に出した場合、賃料収入は「国内源泉所得」に該当し、所得税が課税されます。そして、税務署からの納税通知書等の書類を受け取る住所を日本国内に有しない海外居住者は、その納税業務を管理する「納税管理人」を選任した上、税務署に対して届け出て、この納税管理人を介して、「確定申告」を行い、所得税を納税する必要があるのです。

 

最近は、海外赴任者用の一時賃貸の仲介サービスを提供する業者も増え、そのような業者を利用する場合には、その業者が納税管理人を務めてくれるのが通常であると思いますので、あまり問題にならないことが多いでしょう。危険なのは、収益不動産を相続した場合です。親の代からマンションを賃貸に出していて、そのまま海外に住む非居住者がそのマンションを相続した場合、親の代からお世話になっている街の不動産仲介業者が、このような海外在住者向けの手続を知っているとは限りません。誰から何のアドバイスも受けずに、納税管理人を届け出ず、所得税の未納を生じさせかねません。

 

この場合、税務署は、「公示送達」という制度を利用して(平たく言いますと、日本の役所に一定期間「書類を受け取りに来て下さい」といった旨の掲示をすることによって、書類が送られたとみなしてしまう制度)延滞税を課すことができます。最悪の場合、知らぬうちに不動産が差し押さえられていたという事態にも発展しかねません。

 

海外在住者の方々にまつわる日本の法律の話を中心として、コラムを執筆致します。どうぞ宜しくお願い致します。

今月の日本原風景

我が家の正月です。日本に帰国した後、おせち料理がさらに美味しく感じられるようになりました。単に年を取っただけだからかもしれませんが…。(写真:本間拓洋)

文=元シンガポール在住弁護士・ニューヨーク州弁護士 本間 拓洋(本間・辻村法律事務所

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.250(2014年01月20日発行)」に掲載されたものです。

おすすめ・関連記事

シンガポールのビジネス情報サイト AsiaXビジネスTOP第1話:日本への所得税の納税 - 不動産収益の落とし穴