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会計・税務相談

2015年9月21日

Q.法人税の申告手続きの際、「国際化のための2倍額控除制度(Double Tax Deduction for Internationalisation Scheme)」の対象となる費用が発生したかどうかを聞かれました。この制度はどのような内容のものでしょうか。

企業の海外進出を支援する200%所得控除

国際化のための2倍額控除制度」は、シンガポール国際企業庁(IE Singapore)が管轄する優遇税制の一つです。シンガポールの国内市場には限りがありますが、周辺には今後大きな成長が見込める国が多くあります。シンガポールの企業による海外への販路拡大に向けた積極的な取り組みを支援するため、国際化のための活動として認められた費用について、実費の200%が損金算入されます。対象となるのは、以下の要件を満たす会社です。

 

①シンガポールで設立された会社、またはシンガポールに恒久的施設を有する会社
②商品もしくはサービスの販売促進を主たる事業目的としていること
③所得税法、経済拡大奨励法、その他の優遇措置や補助金の適用を受けていないこと

 

日系企業のシンガポール子会社や支店も、上記の要件を満たせば適用を受けることができます。国際化のための活動のうち下記の4つの活動に関して認められた費用については、1賦課年度につき合計10万Sドルを限度として、事前申請の必要なく法人税申告の際に発生した費用の2倍額を控除することができます。

 

a)海外での新規事業開発のための出張および視察
b)海外への投資調査を目的とする出張および視察
c)海外で開催される貿易展示会への出展
d)IE Singaporeまたはシンガポール観光局に承認された国内の貿易展示会への出展
上記の活動にかかる費用が年間10万Sドルを超える場合、並びに下記の活動については、プロジェクトが開始される前にIE Singaporeに申請し、承認を得ることができれば、同様に200%の所得控除が認められます。
e)海外での市場調査、事業実現性調査にかかる費用
f)海外における投資採算性調査、投資案件の精査にかかる費用
g)海外市場向けのパッケージデザイン費用
h)商品・サービスにかかる証明書の取得費用
i)海外での宣伝・販促キャンペーン費用
j)マスターライセンスおよびフランチャイズ契約にかかる費用
k)海外の販売事業所の維持費用
l)海外での販促活動を目的とするカタログ・会社案内の作成費用
m)認可された国内の印刷媒体への広告
n)シンガポール国籍・永住権者の海外への派遣費用

 

申請は、IE Singaporeのウェブサイト上でオンラインにて行います。初めて申請する際は、会社概要およびユーザーの登録が必要になります。申請が許可されると、仮許可書(Approval-in-Principle)が発行されます。活動終了後に、活動評価書(Evaluation Form)を提出しなければなりません。活動評価書の内容をIE Singaporeが確認して最終的に承認されると、活動支援書(Letter of Support)が発行されます。これを税務申告時に内国歳入庁(IRAS)に提出することにより、200%の所得控除が認められるようになります。

 

今年度の予算案では、販促活動のために海外に派遣される従業員に関して2015年7月1日から2020年3月31日までに発生した給与について、申請により200%の所得控除が認められることになりました。所得控除が認められる要件は、以下の通りです。

 

①シンガポール国籍または永住権者の従業員であること
②1年以上の派遣であり、海外での事業拡大および従業員の技能習得を目的としていること
③当該従業員は、対象期間を通して申請会社に正式に雇用されており、その給与を申請会社が負担していること
④当該従業員の給与は、派遣先の海外関連会社の損金として処理されていないこと
⑤派遣先の海外関連会社は、申請前3年以内に設立または買収された会社であること

取材協力=斯波澄子(Tricor Singapore Pte. Ltd.

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.288(2015年09月21日発行)」に掲載されたものです。

本記事は一般的情報の提供のみを目的として作成されており、個別ケースについて、正式な会計士の助言なく、本情報のみに依存された場合は責任を負いかねます。

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