シンガポールのビジネス情報サイト AsiaXビジネスTOP第5話:海外在住者と相続-行方不明の親族がいる場合の相続

意外に知らない?日本の法律

2014年6月2日

第5話:海外在住者と相続-行方不明の親族がいる場合の相続

海外で日本人以外の方と結婚し子供をもうけ、すでに沢山の孫に囲まれている方も多くいらっしゃると思います。そして、その子供達も、国境の垣根を易々と超え、更なる第三国に居場所を見つけ根を張っている、そんなインターナショナルなご家庭も、今後ますます増えていくことでしょう。
そのような家族の年長者が晩年に日本に戻り、亡くなった場合、相続もまた、日本国内だけでは完結せず、国境を越えて行われることとなります。このようなご家族で問題となり得るのが、日本国外にある資産の処理の方法と、戸籍には残っているものの居場所が判明しない親族の存在です。
日本法の下で相続が開始される場合、「遺産分割」という手続きがあり、この手続き無くしては、原則として各相続人への遺産の相続は実現されません。そして遺産分割は、相続人の一部を除外して行われた場合には、法的に無効となりますし、また、重要な遺産の一部が漏れていた場合にも、無効となることがあります。多大な労力と時間、費用をかけて行う遺産分割が無効となることを防ぐためにも、相続人と遺産の範囲の確定は最重要で、こと国際相続においては、その確定自体に困難を伴うため、やっかいなのです。
遺産の範囲を確定するにあたり、在外資産の把握のための方法は限られていますが、今年から始まった「国外財産調書制度」は、海外の資産を調査するのに役立つのではないでしょうか。この制度は、毎年12月31日の時点で5,000万円を超える国外財産を保有する日本の居住者が、その国外財産の種類、数量、価額などを申告するもので、今年の申告分から新たに始まりました。相続人としてこの調書の開示を税務署に請求することで、新たな海外資産が発見されるということも今後起こりうるでしょう。
また、居場所がわからない相続人に関しては、「失踪宣告制度」や、「不在者財産管理人制度」の活用が考えられます。失踪宣告制度は、「不在者(従来の住所または居所を去り、容易に戻る見込みのない者)につき、その生死が7年間明らかでないとき」に、その不在者を法律上死亡したとみなす制度であり、一方で、不在者財産管理人制度は、不在者に代わって財産の管理をする者を選任する制度です。
いずれも家庭裁判所に対する申し立てが必要で、失踪宣告が認められた場合は、その者は相続人ではなくなり、その者を除いた遺産分割が可能となります。また、不在者財産管理人が選任された場合には、その管理人に遺産分割協議に参加してもらい、相続の処理を進めることができるようになります。
相続問題は、数ある法律問題の中で、解決が最も難しいものの一つではないでしょうか。親に不義理をして海外に飛び出した方も、日本のご家族に迷惑をかけることのないように、定期的に連絡をとり続けましょう。自分が死亡したことになっていた、なんてことのないように。

今月の日本原風景

行楽シーズン真っ盛り。写真は、京都府は伊根の舟屋です。
(撮影:本間拓洋)

文=元シンガポール在住弁護士・ニューヨーク州弁護士 本間 拓洋(本間・辻村法律事務所

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.258(2014年06月02日発行)」に掲載されたものです。

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