シンガポールのビジネス情報サイト AsiaXビジネスTOP第10話:海外在住日本人が考える日本国憲法

意外に知らない?日本の法律

2014年11月3日

第10話:海外在住日本人が考える日本国憲法

2014年11月3日、日本国憲法は生誕(公布)から69年目を迎えます。ノーベル平和賞の受賞が予測された戦争の放棄をうたう憲法九条、特定の民族をさげずむヘイトスピーチや情報を暴露したものを罰する特定秘密保護法と表現の自由の問題など、昨今は何かと憲法がクローズアップされる世の中になってきているように思います。
しかし、日本国憲法がどのようにして私たちの生活の隅々にまで浸透して、国民生活や、国のあるべき方向性を照らし続けているのか、国内で生活しているだけではなかなか理解するのは困難です。日本では特段意識せずに当たり前として行われていることが、当たり前ではない現実を実感するためには、日本を出て海外で生活し、その国の行政サービスや、生活環境に馴染んでみるのがもっとも早道なのではないでしょうか。
日本国憲法は、(1)基本的人権の尊重、(2)国民主権、(3)平和主義の3つの基本原理を採用しています。何にもまさって個々の人間を至上の価値ある存在として尊重すべきとの原理から基本的人権が導かれ、その個々人が住まう国の在り方を決めるべきであるとする国民主権が導かれ、その最も基本的な土台として、平和主義が導かれます。
そして、日本では、政治活動や、政治的な発言の自由は、最も重要な人権であるとして、手厚く保障されています。それが行き過ぎ、足の引っ張り合いなどの様々な弊害が生じることもありますが、それでもそれは「自由な政治活動を認める大切な価値の代償」として、日本国憲法はこれを保障しています。

また、例えば、日本では、外国の国旗を燃やしたり毀損したりすることは犯罪として刑法で処罰されることがありますが、自分が所有する日本の国旗を燃やしても、犯罪とはなりません。これも表現の自由として保障されているのです(ただし自民党は、これを犯罪とする法案を過去に提出しています)。
また、日本では、多数の横暴、暴走の悲惨な過去を反省し、単一国家としては少数派となる、「2院制(衆議院と参議院)」を採用し、政治に対する不信を憲法上で明確に表明しています。
そして、何よりも希有なのは、日本の憲法は、一切の戦争を永久に放棄し、戦力を保持しないことを宣言しています。日本には、徴兵制がなく、政府の公式見解でも、徴兵制の導入は、この憲法の規定に反するとされています。
日本という国は、「決まらない国」、「決められない国」なのではありません。「決まらない」、「決められない」ことを国是として、悪い方向で物事が決まっていかないことにこそ、より高い価値を認めている国、多数派を是としつつ、多数派を信じすぎない、それを憲法が定めているわけです。
『政治家のあらを探すこともなく、新たな政策もスムーズに決まる国、外国の基地問題もなく、戦力を自ら保持する国』。日本人から見た海外の国へのこのような見方も、その国の市民レベルでは、同じチームで働く同僚が徴兵に行き、また、外に飲みに行っても、テレビを付けても政治的な話題はほとんど皆無で、なんとなくテレビ番組が控えめで画一的なのが現実です。

また、例えば日本からアジアに引っ越して、その国に20年も30年も居住して、税金も納めているのに、ごく小さな町の町長選挙にも参加できない現実にぶつかった時、参政権が自分の問題として現実化します。
日本という国を外側から見ることのできるアジアに住まう皆様の、日本の憲法に対する意見は、非常に比較的、多角的かつ客観的な貴重な意見になることは間違いありません。

海外にいても、在外選挙人名簿に登録すれば日本の国政選挙への投票ができます。一人でも多くの海外在住の方々に、在外選挙人名簿に登録して頂き、将来の国民投票に備えて頂ければ、本コラムの執筆も意義を達します。そして、11月3日は、遠くアジアの国々から、少し日本の憲法のことを考えていただきたいなと思います。

今月の日本原風景

津和野の山里も、もう少しで色づきます。
(撮影地:島根県津和野、撮影者:本間拓洋)

文=元シンガポール在住弁護士・ニューヨーク州弁護士 本間 拓洋(本間・辻村法律事務所

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.268(2014年11月03日発行)」に掲載されたものです。

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