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嶋津良智の「リーダーにつける薬」

2011年12月5日

部下の成長は待たされるもの

先月は、心配で部下に仕事を任せられない上司のお話をしましたが、今月はその解消方法についてお話しましょう。心配を少しでも和らげてくれるものはなんだと思いますか?その前にみなさんに質問です。

 
人はなぜ不安になったり心配になったりするかご存知ですか?
それは、人は「見えない未来」に対して不安になったり、心配になったりするのです。ということは、心配を解消するためには、少しでも見えないことを見えるようにすればいいわけですから、心配を少しでも和らげてくれるものは何なのかというと、それは「報告」です。あまりにも当たり前なのでがっかりされた方もいるかもしれませんが、これが非常に大切なのです。

 
仕事を任せられた部下には、『結果責任』はもちろんですが、『説明責任』も問われます。心配性の方は、そのことを仕事を任せるときに、はっきりと部下に伝えていくべきでしょう。更には、どんなタイミングで、どんな内容の報告を受けたいと考えているのか、そこまでしっかり指示をしておけば、だいぶ心配は解消されるはずです。そして、忘れてはならないのが、仕事を任せたからには上司として、ある能力が問われます。それは、「我慢する」という能力です。私は部下育成に関するセミナーの中で「部下の成長は待たされるもの」と説いています。

 
例えばお子様がいる方なら分かりやすいと思いますが、親にとって子供が成長していく段階で「早く○○できるようになって欲しい」と思いながらも、待たされることばかりではないですか?笑う、目が見えるようになる、しゃべる、ハイハイする、歩く、自分で食べる、幼稚園に行く、小学校へ行く、中学へ行くなど、待たされることの連続ではないでしょうか。

 
要するに、部下の成長を考えるのであれば、我慢するということは付き物なのです。仕事を任せたと表面上は伝えていても、結局細かいところまで口を出していては、部下にしてみたら「だったら最初からこの仕事を任せないで自分でやれよ」ということになってしまいます。生まれたばかりの赤ちゃんに「お前は‘あいうえお’も言えないのか」とは我慢仕切れずに怒ったりしませんよね?(笑)

 
ぜひ、部下のことを思うからこそ、待つ勇気を持ってあげてください。

文=嶋津良智(しまづよしのり)


株式会社リーダーズアカデミー
代表、シンガポール在住。
2度の株式上場体験を活かし、日本・シンガポールを始め、アジアを中心に経営コンサルとして活動。世界9ヵ国12都市でチャリティーセミナー実施。
最強の部下を育成し、最強の組織を作る、業績向上のための独自プログラム『上司学』が好評を博す。著書7冊執筆、韓国・台湾でも翻訳されている。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.202(2011年12月05日発行)」に掲載されたものです。

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