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嶋津良智の「リーダーにつける薬」

2012年9月3日

不平・不満は会社が健康(健全)である証拠

一般的に日本企業では、従業員の会社や上司に対する「不平」や「不満」はネガティブなイメージがあると思います。しかし、私はまったく逆で、非常にポジティブなものだと考えています。

 
会社にとって「不平」や「不満」をみんなでハッキリ言い合うということは、問題点の顕在化につながります。また、陰でこそこそ言ったり、酒のつまみにしたりしているようでは、潜在化してしまい、表面に現れず、問題を問題とわからないまま経営や部門運営をしてしまうことになりかねません。

 
私はよく人間の体に例えますが、風邪を引いた、怪我をしたなど、表面にはっきり出てくる病気だから早期治療が可能であって、何だか体がだるい、疲れやすい、ということで病院にいっても原因が見当たらずに1年が経過し、未だ改善されないので違う病院に行ったら癌が発見されて、その時は「もう手遅れだった」ということでは遅いのです。

 
ある社長は、「不平や不満は耳が腐るから聞きたくもない」とおっしゃっていましたが、従業員にしてみると、自分が思っていることの、どれが不満で、どれが意見になるのかわからなくなってしまい、「下手に言って社長に怒られるくらいなら、言わないほうがましだ」と、どんどん社員が口を閉ざしてしまうということにもつながります。

 
とはいっても、確かに自分勝手な不平や不満があるのも事実です。そのような時は不平や不満をまずは「課題」に変えて、更にはその課題に対して「当事者意識」を持たせるために、「自分にできることは何なのか」を考えさせるようにします。
わかりやすいように例え話でご説明しましょう。

 
「事務処理が多すぎる」という不満を課題に変えると「事務処理を減らす」となります。
更にそこに当事者としての関わりを持たせるために「事務処理を減らすために私にできることは、自分の仕事の内容を整理して、もっと効率化できないか、○日までに考える」といったようになります。要するに、ポジティブな「不平」や「不満」にするためには、常に「○○するために、私にできることは○○です」と課題転換するように指導を重ねていくということが重要なのです。

 
私もよく企業セミナーで行うのですが、現在その企業で抱えている不平や不満を洗い出していただき、それを課題転換して、実行期日を決めて解決していただくことにより、みなさんが不平や不満の言い方を考えるようになり、更には解決ができて成果が上がっています。

 
単純なことのようですが、「不平や不満を言い合うことは素晴らしいことなんだ」ということを考えたことがありますか?私がよくみなさんにお伝えをしている、目に見えない企業文化が成長の8割を支えているということは、こういったことの一つ一つが文化として根付き、企業は支えられているということなのです。

文=嶋津良智(しまづよしのり)


株式会社リーダーズアカデミー
代表、シンガポール在住。
2度の株式上場体験を活かし、日本・シンガポールを始め、アジアを中心に経営コンサルとして活動。世界9ヵ国12都市でチャリティーセミナー実施。
最強の部下を育成し、最強の組織を作る、業績向上のための独自プログラム『上司学』が好評を博す。著書7冊執筆、韓国・台湾でも翻訳されている。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.219(2012年09月03日発行)」に掲載されたものです。

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