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2013年1月1日

ボトムアップとトップダウン

稟議書に代表されるように、日本企業の行動様式はボトムアップです。担当者により起案され関係部署の承認、ラインの責任者の承認を経て決済されます。この基となるのは、日本の集団主義。さらにこの基となるのは、教育レベル、民度の高さ。さらにさらにその基となるのは、集団でかつ和を重んじること。集団構成員で話し合い、統一意見を出して、その結論を上層部に上げます。上層部は集団の合意をできるだけ保持しようとし、基本的にその結論を追認しようとします。これが可能なのは集団全体の教育レベルが高く、和を重んじ、共同作業が可能なためです。

 
日本での教育は、専門教育でなく一般教育を中心に行われています。逆に言うと、教育・知的レベルが均一化しているので、一人のリーダーが引っ張るのは無理があります。
また、勤労の意思のある者は一般職よりはじめ、階段を一歩ずつ上り、最後は社長/CEOへと行き着きます。最近多少このシステムに変動が起きていますが、日本はかなりの程度能力主義です。欧米流の資格社会になりつつもありますが、本当に欧米流まで行き着くのはまだかなり先のことでしょう。

 

 

これに対してシンガポールでは、教育レベルは高いもののその層は薄く、教育が専門化していることもあって集団の知的レベルが均一ではない場合が多いものです。このために、ディスカッションが難しく、集団としての結論が出ません。教育レベルの高い者達、あるいは専門教育を受けた者達は、それぞれの分野に関する集団のトップに立ち、集団を引っ張って行く立場となります。その下の集団構成員は、トップに従い指示通りに動こうとします。ある程度のポジション以下の従業員には、自分の企業の発展のために知恵を出し貢献しようという意思や気持ちはあまり見られません。

 
これは、ある意味当地の職種別の専門教育システムと、指導者クラスと非指導者クラスを分けた教育システム、既存の社会慣習より来ていると思われます。その形を現したものがマネージャー用のトイレの存在。このトイレの件は欧州より持ち込まれた社会慣習でもありますが、社会/企業の発展を考えるのは、その様な教育を受けた者達およびその様な社会階層の者達の仕事であるという、社会全体の認識があります。

 
当地では秘書業務がかなり発達しています。なかなか有力な業務システムです。責任者には必ず秘書が付き、二人三脚で業務をこなしていきますが、秘書が外部との打ち合わせに参加する事はほとんどありません。また、ほとんどの秘書は名刺を所持していません。責任者も打ち合わせには一人で対応します。

 

 

結論としては一般教育を主とし、平等感の強い日本はボトムアップによる決定機構が向いており、専門教育を主として役割分担社会の感が強い当地はトップダウンの決定機構が向いていると言えます。

 

 

今月のスナップショット

日曜日の早朝、ある企業の“早朝健康歩き”の一コマ。日本的な集団活動で皆の企業への一体感を醸成させる。(写真:丸茂修)

文=ケルビンチア・パートナーシップ法律事務所・丸茂 修

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.226(2013年01月01日発行)」に掲載されたものです。

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