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ビジネス体験・日本流とシンガポール流

2013年12月16日

本音と建前

今回は使い古されたタイトルに、少し新しい見方をしてみます。
日本の社会は組織で成り立っている縦重視の建前社会です。建前社会で成功する秘訣は何でしょうか。日本の社会は元々“村文化”から発展しており“集団主義”です。集団主義でグループに所属すると仲間意識を持って動きます。さらに家族のように親しくなり、家族主義になると“争ってはいけない”となり“和”が生まれました。

 
このような社会では個人競争が嫌われ、仲間内での競争は少なくとも表面的には隠さねばなりません。競争するなら他の集団との競争です。日本では“出る杭は打たれる”という言葉があります。科学の分野でノーベル賞を取りたければ欧米の大学へ勤めろということが、大学教授の間では暗黙のルールとなっているそうです。

 
また、日本の社会では何かにつけて“チームを組んで動く”ことが好まれます。何でも“仲間と一緒にやる”という価値観を大切にしています。日本で成功するための秘訣は“分からないフリしてニコニコしていること”です。

 
建前は集団の論理です。自分が所属する集団の中の人間関係を規制する原則です。強い規制力を持った道徳的な感覚です。言葉で表すなら“恩”、“忠義”、“孝行”、“人情”となり、それが発展して“ご縁”、“お陰様”、“気配り”となります。人間関係に対して大変な気配りをしているのです。要するに、“集団の利益を最優先に考え、自分のことは後回しにする”ということです。

 

 

それに対して欧米流儀であるシンガポールは、個人というもので成り立っている横重視の本音社会です。組織のリーダーも調整型ではなく、自ら戦略を練り引っ張っていく指導者が主流です。その代表者がリー・クアンユー元首相です。以心伝心、察する等の感覚は全く有しませんので、戦略を一から十までこと細かに説明し、相手が理解するまで十分に説明を尽くします。説明を理解できない集団構成員は納得出来ずに脱落し、また、辞めていきます。ただし、残りの全てを理解している集団構成員は、そこから全速力で作業の遂行に当たります。リーダーと集団構成員がその進むべき方向、戦略を理解しあうと、かなりの力を発揮します。

 
逆にリーダーが集団構成員を説得できないと、組織が行き詰まり、空中分解してしまいます。集団を引っ張る戦略と個性を持った人物で無いとリーダーとして務まりません。シンガポールで集団構成員を方向付け、戦力化するためには、理論的な説明により納得させるのが極意です。

 

最後にもう一つ、日本には本来“チーム・ワーク”にあたる言葉が無いそうです。そもそもチーム・ワークが大前提であったために、チーム・ワークを象徴する“和”という言葉に全てが集約されたそうです。また、“think”という英語が日本に来るまで、“理論的に考える”という言葉は無かったそうです。感覚的に、または直感的に“思う”という表現しかなかったのです。
海外で活動する我々にとっての大きなヒントがここにあるようです。

 

今月のスナップショット

ミャンマー・ヤンゴン市内の自転車タクシーの親父さん。お昼です。半日の稼ぎはどうだったのかな?(写真:丸茂 修)

文=ケルビンチア・パートナーシップ法律事務所・丸茂 修

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.248(2013年12月16日発行)」に掲載されたものです。

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