シンガポールのビジネス情報サイト AsiaXビジネスTOP感性トレンド編〈第1回〉諸行無常の中でチャンスをつかむ

ビジネス4賢者が送る、成功への道しるべ

2014年7月21日

感性トレンド編〈第1回〉諸行無常の中でチャンスをつかむ

「祇園精舎の鐘の声」で始まる平家物語。子供の頃に暗記した、あの「盛者必衰」を、大人になってから仕事で実際に嫌と言うほど経験した方もおられるのではないでしょうか。絶好調で売れていたものが急に売れなくなったり、大人気だったブランドがいつの間にか見向きもされなくなったりしますよね。
私は、ライセンスブランドの商品デザインを担当していました。その頃、ブランドの人気を保つ術がわからず、次々と新規ブランドを立ち上げては潰すということをしてしまいました。
かつて人気だったデザインやブランドがかっこ悪く感じてしまうのはなぜなのか?その反対に、古臭かったものが新鮮に見えたりするのはなぜなのか?商品寿命というよりは、何か周期性があるのでは?と、私は、ダメになったブランドをなんとか復活させようと、答えを探しておりました。

 

そして、人の感性が56年周期で変化するという仮説に出会ったのです。それが、「感性トレンド」です。28年間の単純なことに好感度が上がる時期と28年間の複雑なことに好感度が上がる時期があります。これを交互に繰り返して、56年たつとその56年前と同じ感性になります。
気の長い話ですが、事例を探っていくと、メルセデス・ベンツのSLシリーズでドアが上に開くガルウイングは56年ぶり、イギリスのキャサリン妃のウエディングドレスは55年前のグレース王妃のドレスと酷似、通天閣の56年後に東京スカイツリー、渋谷の東急文化会館の56年後に渋谷ヒカリエ。これは偶然の一致だとしても、56年前のことを調べて、商品開発のヒントに使ってみたくなりませんか?

 

1964年から56年ぶりの2020年に東京オリンピック開催が決まって、56年前の気分が戻ってきています。2009年に2016年東京オリンピックを石原元都知事が目指した時は、都民の関心も今一つでしたが、あれから4年で、人の気持ちは大きく変わりました。東京にオリンピックを、という気持ちが、再び巡ってきたのでしょう。
繁栄したものが凋落する一方、パッとしなかったもの、ダメだったものがブレークする。無常観とともに、新しい希望が生まれるのですね。この世のものは変わり続ける、ということが世の法則として変わらないこと。チャンスは、無常だからこそ巡ってきます。

 

1964年の東京オリンピックの後、1970年に大阪万博でした。この時の、東京から西へと関心が移るのも繰り返しそうです。2020年の東京オリンピックの後2027年にリニアモーターカーが名古屋へ。ぴったり56年ではありませんが、人の関心は再び西へと動き始めます。

 

次回は、時代の転換点のお話をいたします。この転換点は、14年×4つの時代の区切りになります。感性傾向がそれぞれ違う4つの時代。この4つの時代を探って、未来では人々の感性がどんな傾向になるのかを予測しましょう。

 

tedzuka手塚 祐基(てづか ゆき)

株式会社感性リサーチ研究員、倉敷芸術科学大学芸術学部非常勤講師
21年間の腕時計デザイナーを経て、2006年より感性研究を開始。現在、ネーミングコンサルティングや企業向け講演活動を行う。筑波大学、工学院大学、東京大学大学院情報学環などのゲスト講師も務める。共著『人は語感でいい・悪いを決める』KAWADE夢文庫

ウェブサイト:ameblo.jp/tetsuka-kansei/

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.261(2014年07月21日発行)」に掲載されたものです。

おすすめ・関連記事

シンガポールのビジネス情報サイト AsiaXビジネスTOP感性トレンド編〈第1回〉諸行無常の中でチャンスをつかむ