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2015年7月20日

技術をお金に変える法〈第7回〉 個人のスキルをお金に変える①~今さら訊けないニーズを探す~

1.今さら訊けないプロやベテランの悩み

いわゆる専門家や、その道に長く精通している人は、ちょっと切り口の違う技術を学ぶチャンスがないまま成功してしまう場合も多いです。特に先生と呼ばれたり、偉い肩書がついてしまうと、たとえ知らなくても今さら訊いて教わるなんて恥ずかしい、という隠れた悩みがあるものです。
その隠れた悩みをこっそりと解決してくれる市場は、ブルーオーシャン(未開拓市場)。まさに最高の宝の山を見つけたことと同じです。自分の技術や知識、経験から得られた智慧を、人に教えるビジネスを考える場合、特に対象者をどういう分野に絞り込むかが成否を分ける大きなポイントになります。今回は確実にお金を払っても解決したい悩みを持つプロの専門家に、自分の知識を教えて成功した2つのビジネス事例を紹介します。

2.プロのデザイナーにデッサンの基礎を教える

A子さんは美術大学の出身でしたが、卒業後、特にその知識を活かした仕事はしていませんでした。ところが、美大で学んだデッサンの基礎を教える講座を開設することになったのです。当初、想定した受講者は絵の基本を習得したい趣味で学ぶ人。インターネットで募集を始めましたが、思うように集客ができません。アンケート調査をしてみると受講希望者の中に、プロのデザイナーが1人混ざっていました。何故、プロのデザイナーがわざわざデッサンを学ぶのか?常識では考えられません。この常識に惑わされないことがポイントです。
最近のデザイナーは、CADやパソコン上のソフトウェアを使ってデザインすることがほとんどだそうです。そのため、美術大学を卒業していなくても、パソコンを使えればデザイン画は出来てしまうのです!一方で、手書きのデッサン図面制作の要望がくるとお手上げ、という隠れた悩みがあった訳です。A子さんは、受講ターゲットをプロのデザイナーに絞り込み、集客をかけなおしたところ、毎回すぐ満席の状態になり、これがブレイクのきっかけになりました。その後、テレビ出演のオファーも来るようになり、現在ではアートスクールの代表まで務めるようになりました。

3.ベテランエンジニアにデジタルの基礎を教える

これは私の事例です。私は、前職のソニーのエンジニア時代から、文系の人たちにも科学技術の基礎をわかりやすく教える講座を開講していました。専門分野である半導体やデジタルの基礎の本を監修し、それを基に教えていました。独立後も、細々と依頼があれば続けていましたが、文系や中高生の需要は少なく、むしろ小学生向けの理科実験教室のほうが遥かに人気がありました。
そんな折、商工会議所で講演をした際に、工業部会長から声をかけられました。「技術マーケティングの話は確かに面白かったが、我々ベテランにはもっと学びたい事がある。それはデジタルの基礎。我々はアナログ回路が主流の時代に活躍したので、デジタル回路は設計しないうちに通り過ぎてしまった。しかし、若いモンからは今さら教わりたくない!」。これがきっかけで、ベテランのエンジニア向けに、『今さら訊けない技術講座』がスタートしたのです。しかも、こっそりとお悩みを解決するために、受講生募集はすべて口コミです。そのため、顧問契約先の企業からも好評です。これがフロントセミナーになり、別の大きな講演会のオファーを受けるきっかけに発展していきました。

2例共に、常識に惑わされないことがポイントです。専門家の隠れた悩みを解決するために、あなたのスキルを活かしてみませんか?

shimokawa下川 眞季(しもかわ まさき)

株式会社ダヴィンチ・ブレインズ代表取締役・技術士(経営工学)
慶応大学大学院修了後、1982年にソニーに入社。デジカメの電子シャッター特許で全国発明表彰受賞。社内で最高位の特級特許表彰も2度受賞。技術をお金に変える方法や、アイディア発想法を伝授すべく、全国の商工会議所などで講演活動を行っている。

ウェブサイト:shimokawa-kikue.com

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.284(2015年07月20日発行)」に掲載されたものです。

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