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会計・税務相談

2015年7月20日

Q.2016年に給与明細の発行が義務づけられると聞きました。給与明細の発行にあたり、どのような点に留意する必要があるのでしょうか。

給与明細の発行について

2014年の雇用法の改正に合わせて、政府・労働組合・使用者の代表により構成される
シンガポール三者協議会(Singapore Tripartite Forum)は、給与明細の発行に
関する指針を発表しました。現在、雇用主は給与明細の発行を義務づけられてはいませんが、
2016年中には法制化される見込みとなっています。

給与明細の発行は、原則として全ての従業員が対象になります。雇用主は、最低でも月に一度、
支給対象期間の締日から7日以内に給与明細を発行する必要があります。
例えば、週単位で給与を支給しているような場合は、少なくとも月に一度給与明細が発行されれば
よいので、4週分の支給を1枚の給与明細にまとめて発行しても構いません。
従業員が退職した場合は、退職日までの給与の支給と同時に、最終の給与明細を手渡す必要があります。

• 給与明細には、少なくとも以下の内容を記載しなければなりません。
• 雇用主名
• 従業員氏名
• 支給日
• 支給方法(現金/小切手/銀行振込)
• 支給対象期間(開始日および締日)
• 基本給
• 手当の明細(超過勤務手当は別途)
• 超過勤務手当の支給対象期間
• 超過勤務時間
• 超過勤務手当の金額
• その他の支給(賞与、休日出勤手当、祝日出勤手当等)
• 控除の明細
• 振込金額
• 雇用主CPF拠出額

なお、雇用法では、給与の支給に関して、超過勤務手当を除く給与・手当については
支給対象期間の締日から7日以内、超過勤務手当については支給対象期間の締日から
14日以内に支払うことと定められています。また、従業員が退職する際の最終の給与の
支給については原則として雇用終了日当日、従業員からの退職通知がなく退職した場合
には雇用終了日から7日以内に支給することとされています。

また、雇用法では、給与から控除できるのは以下の費目に限るとされています。
a) 遅刻、早退、欠勤
b) 従業員の所得税
c) 雇用主からの前渡金または借入金の返済(分割にて控除可能、ただし前渡 金は12ヵ月以内の分割)
d) 社宅その他の従業員が享受した福利厚生に関する従業員負担額
e) 従業員の過失による金品の損失の補償(一括控除に限る)
f) 従業員の依頼により提供された食事
g) CPF従業員拠出金
h) 従業員の依頼による認可貯蓄制度等への拠出
i) 従業員の同意による共済団体への支払い

上記のうち、(c)、(d)、(e)については、一度に控除できる金額はそれぞれ1ヵ月分の
給与の25%が上限とされています。また、1ヵ月の控除の合計額は、
(a)、(b)、(c)、(i)を除き、給与の50%を超えてはならないとされています。
給与明細の発行は、印刷物等によるハードコピーでもEメールやシステム上で閲覧できる
ソフトコピーでも構いません。また、そのレイアウトについて特に指定はありませんが、
指針の中に給与明細の見本も表示されているので、どのように作成すればよいか分からない
場合にはそれを参考にするとよいでしょう。


給与明細の見本
http://www.mom.gov.sg/~/media/mom/documents/employment-practices/guidelines/tripartite-guidelines-on-issuance-of-payslips.pdf

取材協力=斯波澄子(Tricor Singapore Pte. Ltd.

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.284(2015年07月20日発行)」に掲載されたものです。

本記事は一般的情報の提供のみを目的として作成されており、個別ケースについて、正式な会計士の助言なく、本情報のみに依存された場合は責任を負いかねます。

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