シンガポールのビジネス情報サイト AsiaXビジネスTOP『規制こそビジネスチャンス』が、インドビジネスで勝つ鍵・他

インドの今を知る

2010年7月5日

『規制こそビジネスチャンス』が、インドビジネスで勝つ鍵・他

『規制こそビジネスチャンス』が、インドビジネスで勝つ鍵

日経BP『熱い!インドビジネス実践講座』の連載第1回「規制こそチャンスや!」(2010年6月8日掲載)は、インド駐在歴20年超を誇るコンサルタント、自称“インドマスター”の元に、これからインド進出を考えているベンチャー企業社長が訪れて相談していく、というもの。ニューデリーで2009年12月に「日本に正しいインドの情報を広め、日系企業を支援する」ことを目的として結成された、インドビジネス研究会による連載です。

インドでビジネスをするためには、先入観や固定観念にとらわれず、インドを正しく理解し、実態を把握することが必要です。そのためには、インドの宗教についても理解しておく必要があります。多くのインド人は牛肉を食べませんが、デリーやバンガロールには牛肉のステーキも提供するレストランがあり、最近ではインド人もよく見かけるようになってきています。また、「柿ピー」も人気で、七味唐辛子やわさびなどのピリ辛味もインド人に好評です。デリー、ムンバイなどでは寿司の人気が高まりつつあり、5つ星ホテルの証として寿司バーの有無を問う人もいます。

小売は外国資本にとって、規制が強い分野ですが、「規制こそビジネスチャンス」であり、これが今日のインドビジネスで勝つための格言です。

インドでは規制によって地元の小売業が保護され過ぎており、消費者はもっと多種多様なサービスを望んでいます。アイデア次第では、規制の範囲内でもインドの消費者の心をつかむビジネスモデルを作ることも可能です。

インドの外資規制の下では、他国と違ってフランチャイズ方式は適法で、コンビニもフランチャイズ方式であれば可能です。ブランド使用料、ノウハウの対価などの無形資産の対価(ロイヤルティなど)については、送金規制が2009年末に撤廃され、コンビニに限らず、ノウハウ・システムを売って稼ぐコンサル系のビジネスにもチャンスが広がっています。

米ウォルマートなどの欧米系の巨大リテーラーは、既に卸売りと小売店網をフランチャイズにするスキームなどで、すでにインド進出を果たしています。今後、小売市場が開放した暁には、既に構築した卸売りとフランチャイズのネットワークを足がかりにして、一挙にインド市場を席巻しようという戦略です。

 

中間所得層の旺盛な需要を背景に、高い成長

日本経済新聞2010年6月1日付の記事「インド8.6%成長 1~3月実質 製造業がけん引」は、今年1~3月期のインドの実質国内総生産(GDP)が前年同期に比べ8.6%増え、昨年7~9月期と並ぶ2期ぶりの高い伸びを示したことが伝えられていました。

インドの実質成長率は2005年度から3年連続で9%台に達した後、08年度は世界的な金融危機の影響を受け6.7%まで減速しました。そして09年度は、今年1~3月期の高めの成長により7.4%に持ち直しました。シン首相は10年度を8.5%まで高まると予想しています。

製造業の生産が、1~3月期には16.3%も増えました。2ケタ増は2四半期連続となります。自動車産業は4月の国内新車販売台数(商用車を含む)が前年同月比で39%の大幅増となるなど、中間所得層の旺盛な需要を背景に好調を保っています。これが鉄鋼の需要も刺激し、民間最大手タタ製鉄の国内粗鋼生産量は過去最大のペースで推移しています。

インフレを警戒する中央銀行のインド準備銀行は3月と4月に2ヵ月連続で利上げを実施しました。インドの4月の卸売物価は前年同月比9.59%上昇と、予想を上回る伸びとなっています。しかし購入者の7割がローンを組むとされる自動車販売の現場でも、影響は目立ってないようです。インド準備銀行副総裁は、今後も金融引き締め路線を継続し、金利は今後数カ月上昇するとの見方を示しています。

一方インド政府は、人口の4割近くを占める貧困層の生活水準を底上げするため、2ケタ成長を中期目標に掲げています。それで経済構造の改革に向け、今後も小売りや不動産などの規制緩和に力を入れていく構えです。

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土肥克彦(有限会社アイジェイシー

福岡県出身。九州大学工学部卒業後、川崎製鉄入社。東京本社勤務時代にインドでのソフト開発に携わる。2004年に有限会社アイジェイシーを設立し、インド関連ビジネス・サポートやコンサルティング・サービス等で日印間のビジネスの架け橋として活躍している。また、メールマガジン「インドの今を知る!一歩先読むビジネスのヒント!」を発行、インドに興味のある企業や個人を対象に日々インド情報を発信中。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.170(2010年07月05日発行)」に掲載されたものです。

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