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インドの今を知る

2010年8月2日

トップダウンでヒト、モノ、カネを集中投入・他

トップダウンでヒト、モノ、カネを集中投入・他

日経BPのコラム“財部誠一の「ビジネス立体思考」”で2010年6月25日に掲載された“パナソニックの「打倒サムスン」は実現可能か”は、“わが「打倒サムスン」の秘策”というタイトルで文藝春秋7月号に掲載されたパナソニックの大坪文雄社長の原稿についてのものでした。財部氏は、「大企業の現役経営者が、一般誌にこれほど赤裸々に思いのたけを綴った例を私は知らない。日本のエレクトロニクスメーカーは束になってもサムスン1社の利益に追いつけず、白物家電にも強いLGにも新興市場で徹底的にやりこめられている現状に対する危機感からだろう。」と述べています。

インドの年間売上高ではトップのLGが2400億円、第2位サムスンの1800億円に対して、パナソニックはわずかに400億円です。大坪社長は文春の誌上でこれらの数字をあげ、3年後には売り上げを2000億円まで拡大させ、その後の中期計画では韓国勢を凌駕するという並々ならぬ決意を表明しました。

インドはサムスン、LGが「絶対に手放さない」と公言する巨大市場であり、売上規模、ブランド浸透力、いずれをとってもパナソニックを圧倒しています。こうしたなか、大坪社長は超劣勢のインドにおいて、韓国勢に追いつき、追い越すことをコミットメントしたのです。

インドにおける家電流通は近代的な量販店のシェアが2割程度で、地元密着の小規模電気店が残りを占めています。それだけに、一朝一夕にはシェア拡大ができる市場ではありません。だが幸いなことに、パナソニックにはインド駐在15年のベテラン幹部をはじめ、細いけれども、長い地元流通業者とのつながりが脈々と保たれています。さらにパナソニック・インディアの社長には海外営業のエキスパートを就任させるなど、大坪社長はパナソニック全社をあげてヒト、モノ、カネのすべてをインドに投入するという経営判断を下しました。

映画の国インドの人気投票でナンバー1男優をテレビのCMに、女優をエアコンのCMに起用してブランドイメージをアップさせたのも、社長決裁による予算付けのおかげでした。また市場攻略に絶対不可欠な現地ニーズに合致した商品の企画、生産に必要な人材確保も、本社の各事業分野からトップクラスをインド事業にコミットさせました。

パナソニックは全社をあげてインド市場攻略に突き進み始めています。

 

探偵業は、近年のインドの成長業種

AFPBBの記事「結婚前の探偵調査、インド都市部などで増加」(2010年7月5日掲載)で、結婚式の準備を進めていたあるカップルの話が紹介されていました。何もかも順調に運んでいるように思われたある時、突然花婿が関心を失い、そのことに疑問を持った花嫁が、私立探偵事務所に電話をかけて調査を依頼したというものです。

インドでは現在でも、10件のうち9件の結婚は「お見合い」です。そのような事情を背景に、恋人の身辺調査がこの5年間で急速に拡大したということです。

「結婚はギャンブルである」と訴えるインドの私立探偵事務所「AMX」では、魅力的な女性を覆面調査員として接近させ、上記の件では、花婿が薬を飲んでいることを発見しました。花婿は、最近になって自分がエイズウイルス(HIV)陽性であることを知ったのだそうで、結局、この結婚式は取りやめとなりました。

AMXによれば、調査したうちの20%が破談になるということです。

インドでは、特に都市部では新聞広告やウェブサイト、結婚相談所などで家族が結婚相手を探す事例が増加しており、多くの場合、登録情報には良い内容が大げさに書かれていたり、時にはウソがある場合もあるようです。

こうした背景の下、探偵業は近年のインドの成長業種となっています。インドではかつては親密な社会があり、結婚は知り合いの家族の間で結ばれたものでした。しかし現代では、結婚は知らない者同士の間で行われることが増えており、それがリスクも増加させています。その不信感を補うために、私立探偵が雇われ、相手に知られないように調査を行うようになっています。

調査はおよそ7~10日間で、費用は旅費や複雑度、そして家族の経済状況も考慮され、1万5000~30万ルピー(約2万8,000~56万円)程度だそうです。

一生の伴侶となる相手の調査をすることには、なんのやましいこともないと探偵事務所は言います。

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土肥克彦(有限会社アイジェイシー

福岡県出身。九州大学工学部卒業後、川崎製鉄入社。東京本社勤務時代にインドでのソフト開発に携わる。2004年に有限会社アイジェイシーを設立し、インド関連ビジネス・サポートやコンサルティング・サービス等で日印間のビジネスの架け橋として活躍している。また、メールマガジン「インドの今を知る!一歩先読むビジネスのヒント!」を発行、インドに興味のある企業や個人を対象に日々インド情報を発信中。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.172(2010年08月02日発行)」に掲載されたものです。

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