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2010年9月20日

インド駐在員をテロから守る・他

インド駐在員をテロから守る

東洋経済オンライン2010年8月12日付の記事『インドで日本人社員をテロから守るにはどうするべきか?』は、インド事情に詳しいコンサルタントへのインタビュー記事でした。従来インドで発生するテロは、ヒンドゥー教徒とイスラム教徒の対立や、反体制的な政治結社によるものがほとんどで、外国人が出入りするような場所での無差別テロはほとんどありませんでした。しかし07年あたりから、列車、市場、競技場、都市の表通り、駅など外国人がいそうなところでの無差別テロが頻発してきました。

インドのテロリストは大きく分けて、

  1. カシミールの独立を主張するイスラム教徒過激派である「カシミール過激派」
  2. (少数部族の自治獲得などを目指す共産主義過激派で、毛派などと呼ばれる「ナクサライト」
  3. インドからの分離独立を主張する「北東部諸州の過激派」
  4. (宗教上の過激派である「ヒンドゥー過激派」
  5. そして「(カシミール独立運動とは関係のない)一般的なイスラム過激派」

の5つがあります。

このうち増加傾向なのは、5番目の「一般的なイスラム過激派」によるテロで、アルカイダに代表される国際テロ組織との結び付きがあり、資金も豊富で、テロの規模も大きく、解決しにくいということが他のテロリストと異なります。08年11月のムンバイでのテロも、犯人はラシュカレタイバというイスラム過激派やイスラム神学校の生徒などが関係しているとも、また背後にパキスタンが関連しているとも言われています。

日本人にとってカシミール過激派やナクサライト、北東部諸州の過激派は、その地域に行かなければ問題はないのですが、都市部で発生する宗教上の過激派テロが最も脅威です。無差別テロを行う宗教上の過激派に対しては、宗教上の祝日などに宗教施設(ヒンドゥー寺院、モスク)に行くのは避け、普段から事前の情報に触れておくことが必要でしょう。

事前の情報収集には、在インド日本大使館の情報の他、在インド米国大使館の情報(トラベルアラート)があり、これはテロの兆候時点での警戒情報などが掲載される貴重な情報源です。

 

インドの携帯電話産業のポテンシャルは大きい

サーチナニュース2010年8月23日付の記事『インドの携帯電話市場への期待値と懸念材料=大和総研』は、2010年6月まで3ヵ月間インドに滞在した筆者が滞在中に注目した第3世代(3G)携帯電話の周波数割当てのオークションについての記事。入札の結果、政府は当初見積もりの2倍に近い合計6,771億ルピー(約1兆2,500億円)の収入を得ました。これは2009年度のGDPの1%を超える規模で、2010年度の財政赤字をも軽減させる見通しです。

落札事業者は6月上旬に政府へ落札金額を現金払いする必要があり、銀行から現金を調達しました。法人税の納付時期と重なったこともあり、大規模な資金需要の発生は流動性の逼迫を招きました。それまで銀行間市場で資金吸収オペを実施していた中央銀行は、6月より供給オペに転じることとなりました。今回のオークションは国家の財政・金融政策にインパクトを与える規模であり、携帯電話市場への期待値が如何に大きいかが窺えます。

2010年3月末時点のインド国内の携帯電話加入者数は約5億8,000万人で、2010年1~3月期の純増数は約6,000万人でした。市民生活において、携帯電話はパソコンを持てない所得層にとって貴重な情報インフラです。携帯電話端末は新品の安価な機種で約2,000円前後から購入でき、中古市場も存在します。近年の熾烈なシェア争いにより、通話1秒あたり1パイサ(約0.02円)の秒単位課金プランを提供する事業者も現れる等、料金競争が携帯電話の普及を牽引しています。情報インフラに乏しい農村部においては、農作物の価格決定等に使われ、重要な役割を果たしています。

3Gの高速データ通信を用いた様々な分野での新サービスによる生活向上に、インドの人々も大きな期待感を持っています。国民の嗜好を考慮すると、ボリウッドを中心とする映画音楽や、クリケットの動画・スコア速報などのコンテンツ配信が有望なサービスとなるでしょう。いずれにせよ、ターゲットとなる加入者の所得に見合った価格設定と収益のバランスが鍵となります。

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土肥克彦(有限会社アイジェイシー

福岡県出身。九州大学工学部卒業後、川崎製鉄入社。東京本社勤務時代にインドでのソフト開発に携わる。2004年に有限会社アイジェイシーを設立し、インド関連ビジネス・サポートやコンサルティング・サービス等で日印間のビジネスの架け橋として活躍している。また、メールマガジン「インドの今を知る!一歩先読むビジネスのヒント!」を発行、インドに興味のある企業や個人を対象に日々インド情報を発信中。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.175(2010年09月20日発行)」に掲載されたものです。

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