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インドの今を知る

2011年5月2日

今後インドは、より加速度的に発展する可能性・他

今後インドは、より加速度的に発展する可能性

日経BP2011年3月25日付「急成長する大国インドの実像」は、経営コンサルタント小宮一慶氏のコラム。3月上旬に、氏が非常勤役員を務める会社のインドにある工場を訪問した際に感じた、新興国ならではの熱気やインドで見たもの、そして今後について感じたことなどをつづったものです。

2009年のインドのGDPは世界11位で、ここ数年は、ほぼ年8%の成長です。ただ、一人あたりのGDPは約1,000米ドル、一方中国は4,000米ドル弱で、インドの方が貧しいと言えます。また、貿易収支が赤字で、2009年度でインドは1,000億米ドルの赤字なのに対し、中国は2,000億米ドルの貿易黒字国です。それにも関わらず成長しているのは、海外からの投資があるからです。

インドは人口が急増しているという点も、大きな特徴の一つです。インドには約12億人という膨大な人口がいますから、内需をあてこんだ投資によって経済が成長しています。投資によって人を雇い、人の生活が豊かになってくると、余計に消費が増え、経済が成長していくという、それを繰り返しながら成長しているのです。投資を呼び込めなくなると、貿易赤字国ですから途端に行き詰まってしまう可能性もあり、今後はいかに輸出産業を伸ばしていくかにかかっているでしょう。

自動車部品メーカーのような装置産業というのは、「どれだけ作るか」が勝負で、需要が伸びているインドは有望です。生産拠点を持つメーカーにとっても、交通インフラは重要な問題。機械や材料などでも、今は多く在庫を持つ必要がありますが、道路事情が改善されれば、在庫を削減できます。

このように、インドはまだまだ発展途上と言え、5年や10年先にインフラが整備されてくれば、より加速度的に発展する可能性があるでしょう。もちろん、インフラ整備でも雇用が増えてお金は落ちますから、それが消費を増やす要素にもなって、経済が成長していくことも考えられます。貿易赤字の問題や環境問題などを抱えているものの、インド経済は今後、飛躍的に伸びる可能性は高く、世界が注目している国の一つであることは、間違いありません。

現地の事情に合わせた製品開発が不可欠

日経BP「インドを席巻する韓国勢を破ったソニー」(2011年4月6日付)は、コンサルティング会社、モニターグループ・アソシエイト・パートナーの中村真司さんによる連載記事です。

インドでは全世帯の3分の2は電気が通っていなかったり、通っていても毎日何時間かは停電して電圧も安定せず、供給が不安定。インドで家電製品をヒットさせるには、この貧弱なインフラを頭に入れておかなければなりません。

日本企業がインドの消費財市場でとってきた戦略は、1つは、日本と同じように最先端の技術を使った製品をプレミアム層に売り込む戦略ですが、その市場規模は小さく、欧米企業との競合も激しいものです。もう1つは、日本では時代遅れの製品や、グレードを下げた製品などを比較的安価で投入する戦略ですが、利益を出すにはサプライチェーン全体の再構築が必要で、単に低価格なだけでは地場企業などとの競争に勝てません。そこで、現地の事情に合わせた製品開発が不可欠となります。

テレビは、現在市場の8割をブラウン管テレビが占めていますが、薄型テレビに急速に市場が移っていく見込みです。日本勢は、パナソニックや東芝がインド市場に合わせた製品を出し始めていますが、昨年約85万台を販売し、2位LG電子、3位サムソン電子という韓国勢を抑えて2010年度の薄型テレビ販売で首位に立ったのがソニー。インド人が大音量で映画を見ることに着目し大口径スピーカー搭載モデルを開発、大ヒットさせました。価格は他社製品よりも若干高めながらも、ブランドの好イメージ構築に成功しています。

インドの消費者は、販売員に相談しながら購入を決める人が多く、今後販売員を含めて、いかに自社製品やサービス体制が優れているか、丁寧に伝えていくことが重要です。また、家電や自動車を購入する際に、壊れた場合の修理費用の安さやサービス対応の良さを重視します。サービス体制を整えて、広く消費者に伝えていくことで「高サービス企業」というイメージを築くことが、インドの特に耐久消費財市場を攻略する上での1つのポイントです。

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土肥克彦(有限会社アイジェイシー

福岡県出身。九州大学工学部卒業後、川崎製鉄入社。東京本社勤務時代にインドでのソフト開発に携わる。2004年に有限会社アイジェイシーを設立し、インド関連ビジネス・サポートやコンサルティング・サービス等で日印間のビジネスの架け橋として活躍している。また、メールマガジン「インドの今を知る!一歩先読むビジネスのヒント!」を発行、インドに興味のある企業や個人を対象に日々インド情報を発信中。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.188(2011年05月02日発行)」に掲載されたものです。

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