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インドの今を知る

2011年6月6日

インド企業との契約では、契約内容を明確に・他

インド企業との契約では、契約内容を明確に

SankeiBizの記事「【インド進出ポイント】(2)取引と進出 簡素な契約はトラブルの原因」(2011年4月22日付)は、日系企業のインド進出を支援する、アンダーソン・毛利・友常法律事務所の琴浦諒弁護士にその際の留意点を聞くシリーズのものです。

インド人は日本人と比べて訴訟に対する抵抗感が低く、インド社会は訴訟沙汰になりやすいため、日本企業がインドへ進出したり、インド企業と商取引を行う際には、法律面でどんな点に注意すればいいのかを琴浦弁護士が解説しています。

第一回目では、インド人は英米式の契約社会で、しかも議論好き、そしてもめごとが起きればすぐに訴訟することや、日本企業がインド企業から訴えられるケースとしては、10年以上前にインドに進出した日本企業が現地のパートナー企業に提携解消を申し出て、相手側が訴えてくる例が多いことが示されました。

インド企業と、売買や代理店、及び業務委託契約などを締結する際には、契約内容を明確にしなければなりません。すなわち、相手に履行してほしい事項や解除といった契約終了の条件、損害が生じた場合の賠償などはすべて契約書に記載するべきでしょう。

インドの法律は英国の法律を手本としているため、内容そのものが不合理であることは少なく、準拠法がインド法になっても日本企業が不利になることはありません。

契約に盛り込む紛争解決方法で留意すべきこととして、インド国内での裁判を規定することは避けたいものです。インドの裁判は解決までに長い時間がかかるうえ、インド企業が訴訟に持ち込むケースが多くなるため、日本や第三国での仲裁を選択すべきです。

日本企業の多くは、インド企業との契約の際に紛争解決方法を第三国での仲裁を選択しています。そのうちほとんどが、シンガポール国際仲裁センター(SIAC)を指定しています。

紛争の芽を早く摘む

東洋経済オンライン5月2日付の記事「インド進出の日系企業でいかにインド人管理職をマネジメントするか」は、インドを専門分野の1つとして活躍する日本人弁護士の小川浩賢氏に「インドに進出する日本企業のための人事労務上の注意点、法律上の課題」などについてインタビューしたもの。小川さんはインド進出の法務を、1994年頃からやっています。

インドに進出した日系の製造業は、ブルーカラーからホワイトカラーまで、育ててきたのにすぐ辞めてしまうと、皆さん頭を抱えています。ただ、責任を任せられるくらいに育ったところで辞めてしまうのは、だいたい会社側がやりがいのある仕事を与えられてないのが原因です。

管理職の転職についてはその裏側に雇用する側の「任せる方向性」と被雇用者の「やりがい」との間にミスマッチがあります。日本企業には、どこか見下すようなところがありますが、この場合は「使いきれてなかった」と認識すべきです。また、インド人とベッタリになってしまう場合も問題です。公私の境目がなくなって、首根っこを捕まえられてしまうようなこともありえます。

日本の本社側は、数字だけで管理するのは不適切で、やはり半年に一回でも現地に行くなど、せめてカウンターパートの顔と名前が一致するくらいにはなってもらいたいものです。本社スタッフが現地法人に行くたびに営業担当が違う、経理担当が違うなどという場合、現地法人マネジメントに問題がある可能性もあり、本社側がそういう状態を放っておいてはいけません。

インドの場合、訴訟に対してのハードルが低いですが、会社が訴訟してきたらそれは本気です。これには、インドでは財閥系などオーナー企業が多いので鶴の一声で意思決定がなされることが多く、法的な予算を取りやすいこともあるでしょう。労務管理にしても対企業にしても紛争の芽を早く摘むというのが大事です。いったん、裁判になってしまうと10年、15年、20年とかかりますので大変です。安心してビジネスができるように、そこそこのところで手を打つことが必要で、本社側も現地法人とかかわり続けることが大事です。

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土肥克彦(有限会社アイジェイシー

福岡県出身。九州大学工学部卒業後、川崎製鉄入社。東京本社勤務時代にインドでのソフト開発に携わる。2004年に有限会社アイジェイシーを設立し、インド関連ビジネス・サポートやコンサルティング・サービス等で日印間のビジネスの架け橋として活躍している。また、メールマガジン「インドの今を知る!一歩先読むビジネスのヒント!」を発行、インドに興味のある企業や個人を対象に日々インド情報を発信中。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.190(2011年06月06日発行)」に掲載されたものです。

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