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インドの今を知る

2011年7月18日

インドへの関心は、引き続き高まっている模様・他

インドへの関心は、引き続き高まっている模様

中日新聞6月4日付の記事「市場飽和なし インドの素顔 ジェトロ金沢セミナー 大穀宏さん講師」は、5月に開催されたジェトロ金沢主催のセミナーについて。インド駐在歴16年のジェトロ海外投資アドバイザー大穀宏さんが講師を務め、インド市場の現状や将来性のほか、現地商慣習やインド人との付き合い方など、興味深い情報が提供されたとのことです。

インドは人口12億人で市場拡大が進行しており、飽和状態にはありません。ベトナムの10倍のGDPが毎年加わっており、二千数百万人の消費力が低所得層から生まれています。人口の6割が30歳以下で、米国が着目する世界トップレベルのマンパワーが1/4の労賃で存在しています。04~06年度には二百数十社しかなかった日本企業は、2010年10月1日現在 725社が1,239拠点を設けています。

課題としては、戦後、旧ソ連の影響下にありインフラの整備が遅れたこと。毎年千数百万人の労働力が供給されていますが、四、五百万人の失業者が出ています。半面、安価で優秀な労働力を得ることができます。もっとも、人口の5%しか税金を払っていないとされ、財政赤字にあります。しかし、年収1億円以上の所得層は毎年12~13%伸びています。

小売りのほとんどが「パパママショップ」で、ハイパーマーケットと呼ばれるショッピングモールがしのぎを削っています。問屋がなく、メーカーが流通網を作らなければならないので、代理店との付き合い方が重要です。契約を交わすまでは「火花を散らすぐらい」徹底的に交渉することが重要で、「言ってなんぼ」の世界です。契約書をしっかり作っておけば問題は起きません。

インド人はプライドが高く(特に低いカーストほど)、人前で叱ることは絶対に避けるべきで、英国流の紳士的な言い回しが必要です。一方で、意外と情に厚く、冠婚葬祭は遅れてでも、五分でもいいので参加するべきです。英語教育の浸透で、カーストや年功序列を問わない時代に入ってきており、採用はカーストより英語力重視すべきです。社長自ら社員食堂で一緒に食事をし、家族祭や社内行事で交流した方がいいでしょう。

 

人材確保と顧客企業の集積が魅力

IT Proの記事「ウィプロ、プネを本社に次ぐ大規模拠点に」(2011年6月15日付)によると、インドIT3位のウィプロは、IT人材と顧客が集まっているプネの地の利を生かし、同市の拠点を重点的に強化していく方針。将来は本社のあるバンガロールに次ぐ二番目に大規模なデリバリセンターにするそうです。同社は社員11万8,000人で、世界54ヵ国に72拠点を持ちます。

プネで重点的に人を増やす背景には、バンガロールでの人材の獲得競争が激化し、人件費も高騰していることで、良い人材を採用しにくくなっていることがあります。そこで教育意識が高く、多数の大学が集まっており、年間約12万人もの技術者を輩出するプネに目を付けました。

同社のプネの拠点は、街中から車で1時間程度の経済特区「Maharashtra Industrial Development Corporation(MIDC)IT Park」にあります。

同じくIT Proの記事「インドから中東市場も狙う富士通コンサル」(2011年6月14日付)によると、富士通コンサルティングインディア(富士通コンサル)は、上記の経済特区にオフィスを構え、2006年に買収した米ラピダイムのインド拠点を母体に、ソフト開発のオフショアリングやパッケージ導入、企業向けのITコンサルなどを手がけています。また、「日立コンサル、プネ拠点を4ヵ月で人員5倍に」(2011年6月13日付)によると、日立コンサルティングは、2010年6月に、オフショア開発や運用の拠点として日立コンサルインディアを設立しました。同社は、発足当初は100人だった社員数を、2011年4月には500人にまで増やしています。

プネから車で数時間の距離にあるムンバイには、インドだけでなく欧米やアジアの金融機関が主要拠点を置いています。さらにプネ周辺には、国内外の製造業が生産拠点を構えており、IT産業にとっての主要顧客が多いため、営業活動やサービス提供をしやすいこともIT企業がプネに拠点を置く利点のひとつです。プネは、ハイデラバードと並んでインドにおけるIT人材の新たな一大供給地となりつつあります。

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土肥克彦(有限会社アイジェイシー

福岡県出身。九州大学工学部卒業後、川崎製鉄入社。東京本社勤務時代にインドでのソフト開発に携わる。2004年に有限会社アイジェイシーを設立し、インド関連ビジネス・サポートやコンサルティング・サービス等で日印間のビジネスの架け橋として活躍している。また、メールマガジン「インドの今を知る!一歩先読むビジネスのヒント!」を発行、インドに興味のある企業や個人を対象に日々インド情報を発信中。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.193(2011年07月18日発行)」に掲載されたものです。

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