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ビジネス特集

2014年10月6日

「臍帯血バンク」を知っていますか?

ボランティア・レポート

p1白血病などの治療に使うため、出産直後に新生児のへその緒や胎盤から採取した血液「臍帯血(さいたいけつ)」をバンクで保管することを選ぶ人が、シンガポールでも増えている。公益目的の非営利臍帯血バンク「Singapore Cord Blood Bank(SCBB)」によると、シンガポールで2013年に出産した人の9%が同団体に臍帯血を提供。一方で、日本人からの提供はまだ少なく、今年8月、ボランティアの日本人女性たちは、日本語版の冊子を作成するなどの普及活動を始めた。

 

通常の出産では、臍帯血はへその緒と胎盤の中に入ったまま捨てられてしまう。しかし、臍帯血の中には、赤血球、白血球、血小板などをつくりだす細胞(造血幹細胞)が多数含まれている。そのため、バンクで凍結保管しておけば、白血病などの血液の病気や遺伝病の患者に移植し、治療に役 立てることができる。

 

臍帯血バンクには、他人のために提供する公益バンクと、赤ちゃんや家族自身の備えとして保管しておく私的バンクの2種類がある。SCBBは公益バンクで、必要とする患者が現れた際に、移植のために臍帯血を提供する。

 

臍帯血のメリットは、新生児や母体に痛みや苦痛を与えることなく安全に採取できること。採取は通常、出産直後に新生児から切り離したへその緒表面の血管に針を刺して行われる。また、移植に際しても、患者の血液とのHLA型が合いやすいことや、移植後の免疫反応が比較的軽症であることも利点とされている。

 

2014年8月末時点でSCBBは提供された中から選別された1万1432件の臍帯血を凍結保管しており、初の移植が行われた2006年以来、160の臍帯血が使用された。SCBBの広報担当ニーシャ・アブドル・ラザックさんは「我々のミッションは、安全で質の高い臍帯血を保管し、シンガポールや世界で移植を必要としている患者さんのために役立てること」と話している。

 

臍帯血を提供するには?

SCBBへの臍帯血提供は、提携している9ヵ所の産科医院で行うことができる。シンガポールで日本人が出産する際によく利用される、グレニーグルス病院やマウンドエリザベス病院、ラッフルズホスピタルなども参加、もちろん出産を予定している日本人も提供することが可能だ。

提供に必要な手順は以下の通り。

 

入院前

 1. かかりつけの産婦人科医に臍帯血バンクへの提供の意思を相談。

 2. Singapore Cord Blood Bank(SCBB)へ電話(6394-5011)し、事前登録面談(妊娠32週以降)の予約をする。

 3. SCBBの担当者との面談で同意書に署名し、提供可能かどうかを判定する病歴に関する質問票を記入する。

出産当日

    4.  病院スタッフから臍帯血提供の最終確認を受ける。

 5.  分娩前に母体から血液サンプルが採取される。

分娩時

     6. 出産、へその緒が切られた後で臍帯血が採取される。
     7.  臍帯血、血液サンプルがSCBB研究所へ送られ、精密検査を経て移植に至るまで保管される。

 

※詳細・問い合わせはSCBBのウェブサイトwww.scbb.com.sgもしくは、Email:info@scbb.com.sgまで。

 

日本人ボランティアも活躍

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村瀬 亜美さんと長男の晴人君(6ヵ月)

私自身も今年3月、シンガポールで出産しました。しかし、当時は臍帯血バンクのことを全く知らず、提供する機会を逃してしまいました。病院でもらったたくさんの資料の中に、臍帯血バンクの案内も入っていたことが後でわかりました。でも出産直前は分娩方法などを考えるのに精いっぱいで、案内に目が留まることはありませんでした。

 

産後、友人に話を聞いて、臍帯血バンクの活動を知りました。子供の世話をしている時には「この子に何かあったらどうしよう?」と度々不安に襲われます。親になってより一層、バンクの活動の重要性を身に染みて感じるようになりました。

 
 

「私が寄付していれば救えたはずの命があったかもしれない」という反省の気持ちを込めて、ボランティア活動を始めることにしました。ママ友たちに聞いても「知らなかった」「知っていたら寄付したかった」という声が多かったのです。だから、今後出産を予定している日本人の皆さんにも知ってほしいと思いました。

 

母親と赤ちゃんをつなぐ臍帯血は、人の命を救える可能性がある宝物です。少しでも多くの人に臍帯血バンクの存在を知ってもらい、日本人のママたちも提供を考えてもらえればいいなと思います。

 

※翻訳などともに活動するボランティアの参加者も募集している。

 

問い合わせは村瀬さん(amitono3@gmail.com)へ。

 
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日本語に翻訳された案内病院などで配布している

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.266(2014年10月06日発行)」に掲載されたものです。
文=石澤由梨子

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